商品情報管理とは、複数の販売チャネルにおいて、豊富で正確かつ完全な、関連性のある商品コンテンツを総合的に管理・提供するプロセスです。その中心となるのは、様々なフォーマットで提供された製品データです。しかし、社内で作成されたり様々なソースから集められたデータには、不正確であったり、古くなっていたり、重複していたりする可能性があります。そこで登場するのが、商品情報管理(PIM: Product Information Management)ソリューションです。
PIMソリューションは、製品データの中心的なハブとして機能し、データの管理だけでなく、異なる販売チャネル(eコマースサイト、印刷カタログ)、マーケットプレース(Amazon、Googleショッピング、Alibaba、楽天)、パートナーネットワークへの配信を簡素化します。
PIMソリューションのメリット
PIM ソリューションには次のような様々なメリットがあります。
- 内部プロセスの最適化
- 市場の変化への迅速な対応
- パートナーネットワークの強化
- 市場投入までの時間を短縮
- 商品ページへのアクセス数の増加
- 顧客体験の向上
- ロイヤルティの高上による売上増加
- 返品の減少
こうしたメリットが得られるのは、PIMの次のような機能によるものです。
- ERPやCRM、データプール、DAMサプライヤー、ベンダーからの情報、その他のファイルシステムなど、複数のソースから製品データを単一のリポジトリにインポート、統合、整理します。
- 製品データの検証とクレンジングを行い、品質と完全性を向上させます。
- 製品データを信頼できる商品情報に変換し、組織全体で共有、アクセスできるようにするためのプロセスを確立します。
- 商品コンテンツをローカライズして充実させ、すべてのお客様にアピールできるようにします。
- 魅力的で最新かつ正確な商品情報を、eコマースサイト、デジタル/印刷カタログ、モバイルアプリ、マーケットプレース、小売店など、すべてのチャネルに提供します。
何がPIMで何がPIMではないのか?
既存システムをPIMソリューションと混同してしまうことがあります。PIMは次のようなシステムとは目的や利点が異なります。
- ERPシステム
Enterprise Resource Planningの略。日々のビジネス活動を管理するために使用されます。Oracleによる定義では「多数の業務プロセスを結びつけ、それらのプロセス間のデータの流れを実現するシステム」とされています。ERP内にある商品関連データは、PIMが扱う商品情報のごく一部です。
- CRMシステム
CRM(Customer Relationship Management)システムは、PIMの機能とは異なり顧客情報を管理します。PIMシステムは、企業が顧客に関する知識を最大限に活用し、適切でタイムリーな顧客体験を創出するのに役立ちます。
- 在庫管理システム
在庫管理システムは、PIMソフトウェアと統合する数あるシステムのうちの一つです。在庫だけでなく、原材料、構成部品、供給品、完成品までをデジタルで管理します。
- DAMシステム
デジタルアセット管理(DAM)システムは、企業が所有するすべてのデジタルアセットを扱い、デジタル画像、動画、ドキュメントを保存、整理、検索し、取り出すことができます。DAMソリューションは通常、スタンドアロンのコンポーネントですが、PIMと統合することもできます。
- カタログ管理システム
カタログ管理システムは、データのエンリッチメントと公開のみに限定されているため(例えば、製品説明や属性情報、画像などの追加/編集)、PIMとは異なります。PIMシステムの機能は、データのオンボーディング、品質管理、パーソナライゼーション、シンジケーション、パブリケーションにまで及びます。
コンテンツ競争に勝つために
お客様は、手元にある多くのタッチポイントやチャネルを駆使して、自分が欲しい情報を的確に提供してくれるブランドを簡単に探すことができます。商品情報は、購入の意思決定をするために必要な情報を、お客様が見ることができて初めて、商品情報が意味を持ちうるのです。
Forresterによると、エクスペリエンス(体験)、ファインダビリティ(見つけやすさ)、インフォマティブ(有益な情報)は、すべて消費者の購買行動を促進するコンテンツに関連する要素です。不完全かつ不正確で、当たり障りのない、貧相なコンテンツでは、お客様は自分が非現実的な期待を抱いているように感じてしまいます。これでは、自社のビジネスを十分に表現できず、潜在的な顧客に残念な印象を与えてしまいます。
しかし、客観的に考えてみても、高品質な商品コンテンツを確保することは簡単なことではありません。質の高い商品情報を維持することは、以下のような多くの理由から非常に困難な課題となっています。 PIMソリューションを持たない企業にとってはなおさらです。
- 商品情報の量の膨大さ
- 古いままの商品情報
- 雑然と管理されている商品アセット
- データの質の低さやチャネルごとの一貫性のなさ
- マニュアルプロセスと旧式のシステム
- 複数チャネルへの商品コンテンツの配信の遅さ
企業は、最適化された商品コンテンツがビジネスの成功に重要な役割を果たすことを過小評価してはいけません。Forresterのレポートでは、「PIMはカスタマージャーニー全体を通して商品コンテンツを管理するために不可欠である」と述べられており、PIMを使用する企業は、より多くの顧客を獲得して市場を拡大し、最終的にはコンテンツの軍備拡大競争で勝利する可能性があると勇気を持って予測しています。
お客様の時代の再到来
さらに、今日企業が直面している現実のひとつに、よりパーソナライズされた体験を求めるお客様の声が増え続けていることがあります。新しいテクノロジーの絶え間ない進歩により、お客様はあらゆる業界のあらゆる企業を破壊しかねないほどの力を得ています。今やお客様は、かつてないほどモバイル化し、より多くのレビューを閲覧し、より多くの商品をオンラインで購入するようになっています。
企業が自社のストーリーを決める時代は終わり、今ではお客様がストーリーの主導権を握っています。あらゆるタッチポイントにおいて、企業が自分たちのことを十分に理解し、必要なものを予測してくれることを期待しています。そして、その期待に応えられなければ、企業の未来が危うくなっているのです。
お客様が求めるレベルのパーソナライゼーションを提供することは、今や不可欠です。 その一方で、Gartner社は大胆にも2025年までに、パーソナライゼーションに投資したマーケターの80%が、ROIの低さ、顧客データの管理に潜むリスク、またはその両方を理由に、その取り組みを放棄するだろうと大胆な予測をしています。しかし、それは、商品情報管理を簡素化してパーソナライゼーションの要件を満たしてくれるシステムと適切に統合されていないことが原因ではないでしょうか?
顧客志向を目指す企業にとって、PIMシステムはどのような役割を果たすのでしょうか。
優れたPIMの条件とは
ほとんどのPIMソリューションが、商品情報管理のための多くの機能や特徴を備えています。しかし、その中で優れたPIMとは何でしょうか?PIMソフトウェアを検討する際に考慮すべきポイントをご紹介します。
- 一元化されたメディアニュートラルなデータ管理
優れたPIMソリューションは、ひとつのプラットフォームで、カテゴリーや階層を使って商品情報をカスタマイズでき、よりよく管理することができます。また、構造化されたコンテンツと非構造化コンテンツの両方に対応していること、さらに、多様なチャネルに公開する前に製品データをクリーンアップし、エンリッチできることも重要です。
最低限必要な機能:オンボーディング/階層管理/データモデリング/継承( インへリテンス)とデータ転送/商品バリエーションやラインナップ管理
- 品質管理
PIMソリューションは、データ品質を改善し、その取り組みを自動化できなくてはなりません。属性やワークフローの検証ルール、バージョン管理、データ品質に関するレポートなどは、効果的なPIMが備えるべき安全策の一部です。加えて、複数の従業員がチームで仕事をしている場合は、業務に基づいたアクセス権とユーザーレベルの権限管理が不可欠です。
機能例:データガバナンス/データスチュワードシップ
- ローカライズ対応
複数の市場向けに商品コンテンツを効率的に翻訳し、翻訳の不要な繰り返しや関連コストを削減するローカライズ管理機能を備えていることも大切です。ローカライゼーションに関する機能は、グローバル市場への拡大や競合他社に対する優位性として活用することができます。
- ワークフローとパブリッシングの自動化
何千もの製品を管理し公開するのは膨大な作業で、自動化されていなくては多くの時間がかかります。ワークフロー管理は必須機能です。公開前にデータの品質を確保できるようワークフローでコントロールすれば、システムがその作業を肩代わりしてくれます。
機能例:ダッシュボード/タスクビュー/プレビュー/通知機能
- 直感的で使いやすいインターフェース
どんなに堅牢なPIMシステムであっても、使い勝手が悪ければ、ユーザーはその利点をすべて活用することはできません。PIMシステムは、すぐに使えて、直感的なナビゲーションであることが求められます。ユーザーの抵抗感を減らすためにも、学習にかかる時間は少ないほど良いです。
機能例:検索機能/一括編集機能
- インテグレーション
PIMシステムは既存のシステムをすべて置き換えるものではないため、柔軟性があり、あらゆるプラットフォームと統合できることが重要です。優れたPIMは、さまざまなコネクターと互換性があり、eコマースサイト(例:Shopify)やサプライヤーのシステムなど、ほとんどのサードパーティアプリケーションと統合できます。
機能例:ERP、CRMなどのフロントエンドおよびバックエンドシステムへのシンジケーションおよびパブリケーション
- モジュール
ほとんどのPIMソフトウェアは、モジュールまたは機能コンポーネントの形態で提供されており、価格は、企業が必要とするモジュール、機能、ユーザー数、コネクタ数によって価格は異なります。堅実なPIMソリューションはスタンドアロンでも機能しますが、DAMなどの要素を加えることで、全体的な機能を強化し、さらに魅力的でリッチな商品コンテンツを提供することができます。
モジュール例:DAM/MDM/MXM
自社に合ったPIMを選ぶ
PIMソフトウェアを検討する前に、まずPIMソリューションが自社に適しているかどうかを確認する必要があります。以下にあてはまるものがあれば、PIMソリューションが役に立つことでしょう。
- 複雑な製品データを大量に管理している
- 複数のチャネルで製品を販売している
- さまざまなサプライヤーやソースからデータを収集している
- 多数のシステムにデータが散在している
- データの入力・共有・配信にマニュアルプロセスが多い
- 製品の変更や追加が頻繁である
商品情報の管理は、ビジネスの成長とともにさらに複雑になっていきます。堅牢なPIMソリューションを導入することで、企業は将来に向けた強固な基盤を手に入れることができるのです。