業界が抱える様々な課題に挑戦し続け、将来を楽観視すべき理由
ファッション全盛期はもう過去の話。イギリスのEU離脱や現在の米中間の貿易摩擦、大西洋の両側で高まる保護貿易主義を受けて、このように感じているヨーロッパやアメリカのアパレル企業が少なくありせん。
加えて、アジアの数多くの有力企業が安価なサプライヤーの役目を卒業し、ヨーロッパやアメリカの競合企業に堂々と直接対抗するようになっています。彼らは勝ち組になりつつあり、すでに国内市場を支配しています。
一方、McKinseyの「State of Fashion 2019(2019年ファッションの現状」によれば、インドや中国などの新興市場は既存の市場を追い越す勢いで急速に発展しています。インドの成長率が最も高く、中国はアメリカを抜いて世界最大のファッション市場となっています。

はやり廃りの激しい時代
かつては、アパレルメーカーがコレクション発表の頻度を決め、年2回に制限していました。昨今では、消費者が常に新しいものを期待しており、彼ら自身がソーシャルメディアを通じてトレンドを牽引しています。
消費者インフルエンサーの影響力
ブランド企業が象牙の塔からファッショントレンドを支配する時代は終わり、いまや消費者がトレンドをコントロールする時代です。自信に満ち、情報を武器にしたミレニアル世代とZ世代がいつ、どこで、何を、どのように手に入れたいかをブランドに伝えます。また、これらの若い世代は、Amazonのおかげで、長く待つということにも慣れていません。
デジタルチャネルを当たり前のように駆使し、多数の商品情報やオファーを入手してインスピレーションを得ます。こうして彼らは、企業のレーダーに映るずっと前から、購買決定をしています。彼らがインスピレーションを得るのが、ブランドやリテーラーではなく、ほとんどの場合、人気SNSインフルエンサーや自分の意見を主張する同世代の若者です。それにはエモーショナルな体験がトリガーとなっています。
ブランド体験の重要性
現在の消費者がオンラインとオフラインの様々なチャネルを行き来しながら購買行動をしており、ファッションブランドはあらゆる接点で一貫したブランドイメージと商品提示を確立することが不可欠です。
それは容易に実現することではないが、商品情報管理(PIM)などのテクノロジーを利用することで、マニュアル作業に時間を費やすことなく、商品データを一元管理でき、適切なチャネルに送ることが可能です。またPIMには、消費者行動に関するインサイトを提供するアナリティクスツールもあります。これにより、アパレル企業は、一貫した商品・ブランド体験を、潜在顧客とインフルエンサーに提供することが可能になります。
ゲームチェンジャーとしてのデジタルチャネル
InstagramやPinterest、Youtube、WeChatなどのソーシャルメディアは、いまやどれも新しいショールームとなっています。そのため、大手ブランドか、スタートアップか、ニッチ商品を提供する企業かを問わず、成功を目指す全てのアパレル企業にとって「デジタルファースト」が最優先事項となっています。
しかし、確立されたブランドとは異なり、新参者は 柔軟性に欠けるビジネスプロセスで時間を取られることもありません。特に小規模な挑戦者らは、絶えず投稿を行い、最大300%もの成長率でファンベースを拡大しています。新しいテクノロジーやコンセプト、ビジネスモデルにより、市場の変化に速やかに対応でき、カスタマーインタラクションに主眼を置いて取り組んでいます。彼らにとって、eコマースが進むべき道です。自社のeコマースサイトに加え、消費者が今いる場所でリーチするために、ソーシャルコマースやモバイルコマースなどの多様な可能性に頼っています。

サステナビリティと信頼性
昨今、倫理的な資源管理や人道的・社会的価値が、消費者が特定のブランドを信頼するかどうかを決める際の大きな判断軸になりつつあります。バングラデシュの縫製工場の倒壊や、売れ残り商品の大量焼却処分など、グローバルブランドのさまざまなスキャンダルによって、消費者は社会問題に対する大きな問題意識を持ち始めています。
サステナビリティ、公正性、透明性もまた、ミレニアム世代とZ世代から信頼を勝ち取るうえで重要な役割を担っています。
McKinseyの「State of Fashion 2019 Consumer Shifts(2019年ファッションの現状 消費者の変化)」によれば、消費者の3分の1以上が、購買決定において、素材、バリューチェーンのトレーサビリティ、情報の一貫性、商品のサステナブルな使用をもっとも重要な要素に挙げています。
これは、ブランドを再構築し、新しい事業領域を検討して、一貫した外観で明確な姿勢を示す機会となり得ます。さらに、ブロックチェーンなどの新しいテクノロジーにより、今後サプライチェーンをシームレスに記録することができるようになります。

デジタルテクノロジーの活用
初回接点から商品の購入に至るまで、カスタマージャーニーには数々の接点があります。それぞれの接点をマニュアル作業で管理しながら、各接点で一貫した情報を提供するのはほとんど不可能です。
商品情報とそのテキスト情報、画像やデータなどのメディアデータの一元管理・メンテナンス・配信をするシステムを利用すれば、このような作業を大幅に簡素化することができます。また、アナリティクスと商品体験管理ツールにより、消費者に対する理解を深め、関連情報を適時に提供することも可能になります。
eコマースシステムやモバイルショッピングアプリ、高度な検索機能、レコメンデーションツールは、顧客が欲しい商品を見つけやすく、そして、購入しやすくします。AmazonやZalando、Ottoなどのパートナープラットフォームは顧客へのリーチを拡大し、ソーシャルメディアは認知度と顧客ロイヤルティ、購買意欲を増大させます。
McKinseyの最新の「State of Fashion 2019(2019年ファッションの現状)」で「覚醒の年」と呼ばれる今年、挑むべき課題もあれば、多くの機会もあります。アジリティとスピード、新しいアイデアでビジネスに挑むべき時が来ています。