Eコマースの進化: メーカーやブランドはいかにEコマースの課題に向き合っているのか

1 minute read
ブログの更新情報を受け取る

Eコマースの進化 - メーカーやブランドはいかにEコマースの課題に向き合っているのか

小売業はパンデミックによって変化したのか?

新型コロナウィルスの大流行によって、オンラインで頻繁に買い物をする消費者が増え、より多くの金額を消費するようになりました。もう後戻りはできません。Eコマースの導入に地域差はありますが、世界的な現象です。ONSの統計によると、英国におけるオンライン小売の売上高は、2019年10月には小売り全体の19.1%であったのに対し、2021年10月には26.3%を占めていました1

英国とはまったく異なる経済発展段階にあるブラジルの例を見てみましょう。ブラジル電子商取引協会のマウリシオ・サルバドール会長は、2020年のパンデミック発生からわずか4カ月間で600万人のブラジル人が初めてオンラインで買い物をしたと述べています2。 2020年当初、同協会はこの1年で初めて電子商取引を試すのは400万人ほどだろうと予測していました。

しかし、パンデミックが消費者心理を一変させているという報道は、慎重に扱うべきであることが徐々に明らかになっています。ロックダウンが緩和されたあとも、オンラインで商品を購入する消費者の割合が増えています。 英国の数字に再度目を向けてみると、過去2年間で、Eコマースには3つのピークがあることがわかります。

  • 2020年5月、オンラインでの売上は小売総額売上高の32.8%
  • 2020年11月、オンラインでの売上は小売総額売上高の37.1%
  • 2021年1月、オンラインでの売上は小売総額売上高の37.6%

この期間、小売業全体の売上高に占めるEコマースの割合は上昇しているものの、その上昇幅は一貫しておらず、明らかに持続的なものではありません。むしろ、上記の3つのピークはロックダウンの時期と一致しています。たとえば2020年11月は、新型コロナウィルスの患者数の増加が医療サービスを圧迫するとの懸念から、イングランドとウェールズで不要不急の小売店は休業を余儀なくされました。

これは、別の見方をすれば、店舗が開けば消費者が店舗に戻ってくることを示唆する十分な証拠があるとも言えるでしょう。

Eコマースの増加は、一体どの程度起こっていたのか?

これらの数字を見ると、小売業者もブランドも、パンデミックに起因する一時的な変化と市場の根本的なトレンドとを区別する必要があることがわかります。これは、小売業だけでなく、ブランドやサプライヤーにも影響する問題です。ほんの一例として、消費者が街中や都心で買い物をすることが少なくなれば、サプライチェーンの運営にも大きな影響があるでしょう。

ここでの問題を考えるにあたって、まず世界のEコマースの数字を確認しましょう。Statistaによると、2014年、世界のEコマースの小売売上は1兆3,360億ドルであったのに対し、2019年には4兆8910億ドル(3兆5350億ドル増加)となっています。この数字は、2024年には6兆3,880億ドルにまで上昇すると予測されています4

このことから、Eコマースの活発化を背景に、新型コロナウィルス関連の波が発生したと考えられます。そのために、パンデミックの最盛期に予測担当者が新型コロナウィルスの効果を強調しすぎた一因となった可能性があります。初期の予測では、Eコマースの価値は早ければ2023年に65億ドル に達するとされていました。

しかしながら、詐欺を心配したり、ITに自信のない高齢者のような、従来はオンラインでの買い物に消極的だった人々が、パンデミックが終わっても、少なくとも一部の買い物をオンラインで行うようになると考えられる理由は十分にあります。ネットショッピングがいかに安全で便利な手段であるか、身をもって知ったからです。

この新しい世界で成功するのはどの企業か?

しかし、これらの消費者がどの企業から購入するのかは、まだ不透明です。というのも、この2年間オンライン・ショッピングは活況でしたが、その収益は、少ないポットの中で大きめの割合を占めていることにすぎないからです。 多くの小売業者では、店舗からの収入を追い越せていません。

このことは、英国で2020年11月から12月にかけて、2つの大手小売業が破綻したことで残酷なまでに思い知らされました。Topshop、Miss Selfridge、Dorothy Perkinsなどのブランドで有名なPhilip GreenのArcadia Group5と、百貨店のDebenhams6です。この倒産には多くの要因がありますが、両者とも実店舗の存在に過度に依存していたことは否めません。すでに苦境にあった企業が、政府のロックダウンによる来店客数の減少にさらされることになったのです。

これに対し、高級ブランドのMulberryは、デジタル戦略によって新型コロナウィルスによる不況の最悪期を免れたと考えています。同社のオンライン売上高は、2019年9月までの6カ月間の1390万ポンドから、2020年の同期には2340万ポンドまで急増しました。Mulberryの会計年度の第1四半期において、Eコマースは売上高の67%を占めていました。ここで重要なのは、同社が全体の売上を維持したことではなく(オムニチャネルと呼んでいた小売売上は25%減の4290万ポンドとなり、人員削減を余儀なくされた)、その戦略が異常事態に対処できるほど強固だったということです7

買い物パターンの変化は、小売業の戦略にどのような意味を持つのか?

これらの企業の対照的な運命は、より広い教訓を示唆しています。まず第一に、企業は、パンデミックによるものであれ、基調的なトレンドによるものであれ、消費者行動の変化に適応しなければならないということです。もちろん伝統的な小売業が絶えたわけではありませんが、パンデミックによって、多くの小売業者が、顧客の買い物の仕方についていくのに苦労していることが明らかになりました。

また、この問題に対する見方を変えれば、Eコマースと従来の小売が互いに別物であるという考えは、間違いなく捨て去るべき時期が来ています。ブラックフライデーのブログ8でご紹介したように、消費者はますますさまざまなチャネルを横断して購買を行うようになっています。小売業者が対応しなければならないのは、このような行動なのです。

そのためには、小売の機能的な部分を正しく理解することが必要です。パンデミックの間、消費者は外に出て商品を見ることができず、オンラインで購入せざるを得ませんでした。ロジスティクスの専門知識の価値 、消費者はこの用語を使いませんが、要は確実で柔軟な配送やクリック&コレクトサービスなどの重要性を消費者も認識するようになりました。

その証拠に、顧客は、パンデミックがあろうとなかろうと、注文に応えてくれる、あるいは簡単に商品を手に入れられる、最も信頼できる企業を利用し続けるでしょう。 2021年の米国での調査で、食料品を店頭またはカーブサイド・ピックアップで受け取ることを選択した消費者の47.1%が、店舗に行くのを避けるためにそうしたことが明らかになりました。これはパンデミックにおいては驚くようなことではありません。しかし、46%の消費者が、店頭での受け取りは宅配便に代わる時間節約術だと考えていることも明らかになりました。このことは、より深い傾向を示唆しています。

このようなビジネス環境において、小売の機能面に投資しない小売業者やブランドは、取り残される危険性があります。2021年のレポートによると、サプライチェーンの流れを改善し、物流をより迅速かつ効率的にするためのテクノロジーへの投資は、前年比ほぼ2倍の86億ドルに達しています9

効率化だけで十分なのか?

いいえ、小売業は機能性だけでなく、感情やドラマも重要です。うまく経営されている街角の店は、安心できるコミュニティー感を出しています。優れたCDショップや衣料品店は、ワクワクする社会空間であり、顧客は自分が欲しいと思っていなかったものを買ってしまいます。多くの買い物がオンライン化され、今後もオンラインで行われることが予想される中、従来の街や都市の中心部は、単にお金を使う場所ではなく、行くべき場所という感覚を作り出さなければ、苦戦を強いられるでしょう。

このプロセスは、すでに世界中の商店街を作り替えていましたが、パンデミックでさらに加速しました。 専門店や小規模小売店は、パンデミックの頃にその店があったという記憶が残っている場合は特に、現在の立地でうまくいくかもしれません。大規模な小売企業の中には、回転率ベースの賃料(テナントの業績に基づく賃料)を求め始めているところもあり、長期賃貸契約には消極的になってくるかもしれません10。ポップアップストアは一時的であるがゆえにドラマを生み出すのに適しており、より一般的になっていくでしょう。

絶え間ない変化が新しい常識に?

効率と感動を同時に重視する小売の風景は、一見矛盾しているように見えるかもしれません。しかし、小売業の原点は、消費者との約束を守ることです。そのためには、まずお客様の期待に応え、次に新しいアイデアや製品でその期待を上回ることです。

新型コロナウィルスが加速させた小売業界の発展は、この考え方が中心であり続ける理由を様々な形で示したにすぎません。新型コロナウィルスによる市場変動性の影響を過小評価しているわけではありません。企業にとってマルチチャネル戦略を洗練させていくのは難しいですが、しかし、小売企業、ブランド、サプライヤーは、絶え間ない変化が常態化する時代に適応するために、ビジネス上の必須事項を明確にしなければならないのです。

こうした世界では、微妙に異なる理由から、あ らゆる業種の企業が、在庫と在庫を支えるデータを厳密に管理する必要があります。そうすることで、サプライチェーンを通じて製品を効率的に倉庫や店舗に運び、さまざまな場所やチャネルで顧客に提供することができるようになるのです。強力なデジタル戦略を持つ企業が、パンデミック時に最も巧みに生き残り、さらには繁栄していることが証明されたのは偶然ではありません。

新型コロナウィルスの大流行が現在のビジネス状況を作り出したのわけではなく、ただ最も鮮明に映し出したのです。 

eコマースを成功に導く強力なデジタル基盤を構築したIntersport社の取り組み

世界65ヵ国に5,800以上の店舗を展開する大手小売企業のIntersport社は、Contentservを導入して各系列会社で商品情報の作成・メンテナンスをするという負担を回避でき、「信頼できる唯一の情報源」から、各社のeコマースや流通のニーズに対応できるようになりました。