このシリーズの第1部では、新型コロナウイルス感染症パンデミックによって生じた消費者の習慣に関する新しいデータを検討しました。第2部では、さらなる検討をしていきます。このウイルスそのものに関しては、新しい展開があり、多くの専門家は、秋には北半球で再流行が発生する可能性を危惧しています。それが現実のものとなれば、以前お話ししたことと同じ傾向を再びたどることになります。
しかし、今年の後半に生活を制限する方針が復活することがあっても、今度は事前に対策を講じておくことができるでしょう。
ロックダウンの状況に基づくオンライン販売シフト
まだ断言するには時期尚早ですが、外出禁止によって生じたeコマースを利用した行動の増加は、当初の予測よりも永続的ではない可能性があります。英国やフランスなど、外出禁止の方針を延長した国々では、eコマースによる売り上げが好調を維持しています。
対照的に、外出禁止が緩和されたデンマークでは、eコマースの売り上げが減少しました1。そうだとしても、生活の制限を緩和し始めた国々で同様の状況になるとは限りません。
これはブランドにとってどういう意味があるでしょうか?
端的に言えば、オンライン販売の増加から恩恵があったとしても、それで良しとしてはなりません。結局のところ、顧客を獲得すること、これを維持することは別のことです。制限が解除された後も、ブランドができるだけ多くの買い物客を失わないようにするために利用できる戦略としては、以下のようなものがあります。
- 魅力的な顧客サポート
- ロイヤルティプログラムの強化
- プロモーションと割引の機会増加
- パーソナライズされたショッピング体験
- コミュニケーションの改善
- 返品有効期間の延長
顧客エンゲージメントを改善するため、上記の戦略を利用したアスレチックアパレルブランド、Vuoriからヒントを見つけてみてはどうでしょうか。パンデミックにより、店舗を閉めざるを得なかった同ブランドは、eコマースに全精力を傾ける方針に舵を切りました。ショップの売り上げを高めるため、Vuoriは実店舗で買い物をした消費者に割引を提供すると同時に、お気に入りの商品をオンラインで購入できるようにしました。
また、メッセージをエンゲージメントを改善する内容にして、今日消費者が直面している現実に合わせた、タイムリーなものに変えました。さらに、消費者のウェブとモバイル体験を優先しました2。
次の新型コロナウイルス感染症流行の波に備える
多くのパンデミックがこれまでそうであったように、新型コロナウイルス感染症のパンデミックも再び波がやってくるかもしれません3。
パンデミックの波がまた席巻したとしても、それが生活の制限やソーシャルディスタンシング方針の緩和によるものなのか、このウイルスの季節的な一面によるものなのかは、現段階ではまだ不明です。しかし、消費者行動に関して言えば、万が一今年の後半にウイルスの再燃があったとしても、多くのブランドはまた同じ行動を取ることになるでしょう。
つまり、店舗閉鎖とeコマース活動の増加の可能性に備える必要があるということです。その場合、Vuoriの例に従うのは賢明な方法で、eコマースとソーシャルメディアに焦点を当てて、顧客とのエンゲージメントを維持し、高めましょう。
しかし、Vuoriのようなブランドはパンデミックによる打撃があったとき、他のブランドよりも優位な立場にありました。同ブランドは早い段階でD2C戦略を採用したため、容易にeコマースに注力し、必要に応じて実店舗から離れることができました。この他ブランドに先駆けた動きのおかげで、パンデミックがもたらした変化に対してスムーズに適応することができたのです。
残念ながら、大部分のブランドはまだeコマースへの準備が整っていません。数ヶ月前の時点で、ブランドエグゼクティブのたった17%だけが、自分の企業はeコマースにおいて競合他社をリードしていると考えており、71%はやっと追いついたか、なんとかついて行っているだけと述べています4。
これまで起きたすべてのことを踏まえつつ、eコマース戦略について正面から取り組むブランドが増えています。何の対策もしていない会社に味方してくれる時代ではないのかもしれません。
今後の展望
専門家の見立てが正しければ、北半球では秋もしくは冬に新型コロナウイルス感染症の波に再び直面するかもしれません。したがってブランドが予定通りに必要な戦略を立て、ツールと機能を手に入れるための時間はもうそれほど残されていません。
さらに、忘れてはならないのは、生活の制限方針から生まれたeコマースの増加による利点だけではなく、長期にそれらを維持しようと考えるなら、ブランドは顧客のロイヤルティとエンゲージメントを構築し、強化する方法も実装する必要があるということです。